塗料による自然発火について事故を未然に防ぎましょう!

塗料が関連した火災事故の一つに「自然発火」が原因とされる事例があります。
塗料による自然発火とは、一体どのような原因で発生するものなのか?
また、どの塗料に対してどのような対策を行えば安全なのか?をご紹介いたします。
リスクを正しく把握いただき、事故を未然に防いでください。

■自然発火とは?

自然発火とは、人為的に火をつけることなく自然に出火する現象のことを言います。
天ぷらの揚げ玉や木材チップ、ゴミや廃タイヤの山、マッサージ用オイルや塗料が染み込んだタオルを原因とした火災事故を、お耳にしたことはないでしょうか?
これらは自然発火が原因とされる火災事故の身近な事例になります。

(独)製品評価技術基盤機構 「塗料の酸化熱により発火に至る事故の再現映像」
https://www.youtube.com/watch?v=Vyf2r5j1Ms0

■自然発火の危険性がある塗料とは?

塗料は、消防法上において「危険物」または「非危険物」のどちらかに分類されます。
大前提として「危険物」に該当する塗料は、引火性を有するため火気に近づけると危険ですが、全ての塗料が自然発火するリスクがあると言うわけではなく、むろん乾燥した塗膜そのものが自然発火するということもありません。
では、どのような塗料に自然発火の危険性があるのでしょうか? それは、原料に油類(不飽和脂肪酸類)を含む塗料類と、過酸化物を含む不飽和ポリエステル樹脂パテ(ポリパテ)用の硬化剤が、これに該当いたします。

■自然発火の原因と対策について(原料に油類を含む塗料類の場合)

自然発火には「いくつかの条件が重なって出火する」という事が共通しています。
前述の天ぷらの揚げ玉や、マッサージ用オイルに通じるところがありますが、原料に油類を含む塗料類は、塗膜になる過程で空気中の酸素と結びつく「酸化反応」を経て、最終的に「酸化重合」した塗膜を形成します。
この反応には「酸化熱」という熱の発生が伴います。通常、塗装後に乾燥しながら塗膜が形成される過程では、酸化熱として発生する熱量に対して放熱する方が多いため高温には至らず、自然発火のリスクはありません。

しかしながら、塗料が染み込んだタオルや布、養生シート等を無造作に山積みにしたり、ビニール袋や容器にまとめて残塗料と一緒に入れて放置したりすると、酸化熱が逃げることが出来ない密な状態から「熱ごもり」が生じ、この蓄熱効果により酸化反応が増幅、さらに温度上昇が加速して最終的に自然発火を引き起こす原因となります。「酸素」「温度」「密度」「接触面積」などの条件が重なることで発火のリスクが生じると言えます。

従い、これらの条件から一つ以上回避させることが対策となるため「塗料が付着した可燃性のものを山積みにしないで、水を十分に入れた容器に入れてフタをする」などが、具体的な対策となります。

当社では、原料に油類を含み自然発火のリスクがある塗料については、必ず商品ラベルに赤文字で 以下のいずれかの注意喚起を記載しております。使用前にご確認ください。

■自然発火の原因と対策について
(不飽和ポリエステル樹脂パテ用硬化剤の場合)

「過酸化物」を含む不飽和ポリエステル樹脂パテ用硬化剤は、過度の衝撃を受けたり、 持続的に直射日光や熱源の近くにさらされたり、一度容器から出したものを元の容器に戻すなどの際に誤って異物が混入したりすると「自己発熱分解反応」を起こし、自然発火を引き起こすリスクがあります。
衝撃や異物の混入に注意し、必ず直射日光が当たらない、幼児の手が届かない安全な冷暗所等で保管するようにしてください。
詳細は各種パテのTDS(テクニカルデータシート)を参照ください。